営業職のスーツは“おしゃれ”ではない——身だしなみが信頼に影響する理由と、装いを設計するという考え方

D’フレイム常務取締役・近藤が、スクリーンに投影された「①ネクタイ——首元で決まるプロ感」のスライドを指差して解説する様子。手前の受講者は後ろ姿のみ。

2026年6月19日、国内大手生命保険会社の若手社員向けセミナーに登壇しました

2026年6月19日、国内大手生命保険会社で、若手営業職の皆さんを対象にしたセミナー(講演)に登壇させていただきました。

テーマは「身だしなみ」。ただし、いわゆる着こなし講座ではありません。

私が30分を使ってお伝えしたかったのは、ひとつの問いでした。

「その格好で、120万円の商品を売る覚悟はありますか?」

なぜオーダースーツ専門店が、営業職にセミナーをするのか

私には、ふたつの立場があります。

かつて外資系の生命保険会社で、営業職として働いていました。当時、スーツは営業の「武器」でした。今はD'フレイムの経営に関わり、多くの営業担当者を「受ける側」になっています。生命保険の担当者も、毎年さまざまな方が訪ねてきます。

このふたつを経験してきたからこそ、見えてしまうことがあります。できる営業マンとそうでない営業マンの差は、商談が始まる前から、見えている。

これは批判ではありません。営業を受ける側が、実際にそう感じている——という話です。

保険は「月々5,000円」ではなく、「120万円」の商品

月々5,000円の保険でも、1年で6万円。20年で120万円です(5,000円×12ヶ月×20年)。

たとえば、高級ブランドのお店で、出迎えるスタッフの服装がだらしなかったら——シャツがヨレ、ネクタイが曲がり、靴が汚れていたら——その場で気持ちよく高額商品を買えるでしょうか。

保険営業も、同じです。身だしなみは「おしゃれ」ではなく、120万円の商品を扱うプロとしての覚悟の表れだと、私は考えています。

近藤が登壇し、背後の大型スクリーンに「その格好で、120万円の商品を売る覚悟がありますか?」と投影されている。受講者は後ろ姿のみ。
冒頭の問い——「その格好で、120万円の商品を売る覚悟がありますか?」——を背に、近藤が語り出す。

服装に「絶対の正解」はない——場面に合っているかどうかが唯一の基準

セミナーでは、私自身の失敗談も話しました。

社会人3年目のとき、黒いビジネススーツを「礼服の代わりになる」と思い込み、葬儀に着て行ったことがあります。「黒いスーツだから大丈夫」と思っていました。ところが、周囲の礼服と並んでみると、黒の深さも、生地の質感も、まったく違う。自分だけが明らかに浮いていて、その場で叔母から厳しく叱られました。

ビジネスの黒と礼服の黒は、別物です。

ここから見えてくる原則があります。「正しいかどうか」ではなく、「その場にふさわしいかどうか」で、服装は判断される——ということです。

服装が「その場のメッセージ」を覆い隠してしまう、という失敗は誰にでも起こり得ます。たとえば、本人にとっては自信の表れだった装いが、かしこまった場面では「気合いが入りすぎている」と受け取られ、本当に伝えたい中身より先に見た目が目に入ってしまう——そんなことは珍しくありません。場面が変われば、同じ装いでも意味が変わるのです。

営業の現場も同じです。「なんとなく着てきた」服装が、お客様から見ると「準備をしていない人」と映っている可能性がある——そのことを当事者意識を持って考えてほしい、とお伝えしました。

セミナーで取り上げた4つのポイント

当日は実践的な内容として、次の4つのテーマをお伝えしました。

① ネクタイ——首元でプロ感が決まる

営業職は、顔まわり、特に首元をよく見られます。

ネクタイは「ただ締めればいい」というものではなく、衿の開き具合に合った結び目の大きさを選ぶことが基本です。広い衿(ワイドカラー)には、大きめのウィンザーノット。結び目の下に「ディンプル(くぼみ)」を作ることで立体感が生まれます。長さは剣先がベルトのバックル中央に来るのが目安とされています。

首元を整えることで、「ちゃんと準備してきた人」という印象に変わる傾向があります。

② 色と柄——“どう見られたいか”を設計する

スーツやネクタイの色は、好みで選ぶのではなく、「自分がどう見られたいか」を意識して選ぶものだと私たちは考えています。

一般的な傾向として——

  • ネイビー・ブルー系は、信頼感・誠実さと結びつきやすい
  • エンジ・ボルドー系は、説得力・情熱を印象づけやすい
  • イエロー系は、明るさ・親しみやすさを感じさせやすい

柄は、ストライプ(レジメンタル)や小紋が営業職でも扱いやすいとされています。無地はシンプルに見えますが、生地や仕立ての質がそのまま出るため、実は上級者向きです。

「なんとなく」ではなく「意図して」選ぶ習慣の差は、積み重なると大きくなっていくと思っています。

③ クールビズ——「外していい」の先を考える

クールビズは、環境省が2005年に始めた取り組みです。夏の過度な冷房を避けるために、室温の目安を28℃とし、それに合った軽装——ノーネクタイ・ノージャケット——を呼びかけました。

ただ、ここで出発点になっているのは、あくまで「ネクタイを外してもいい」ということだけです。外したあとにどう見せるかまでは、示されていません。

ネクタイを外すと、胸元のアクセントカラーが消えます。そのままでは、見た目が締まらなくなりやすい。

ノータイでも整って見えるためには、ジャケパン(ジャケットとスラックスの色を変える)、クレリックシャツ(衿と身頃で色が違うシャツ)、ボタン色での差し色など、アクセントを補う工夫が有効とされています。

「外していいから外す」のではなく、外したあとにどう見せるかまで考える——そこに差が生まれます。

④ 素材——夏は、夏の生地を

暑い季節に、冬向けの生地のスーツを着ていませんか?

オールシーズン対応をうたうスーツでも、盛夏の暑さにはどうしても限界があります。夏は、夏用のトロピカル織(通気性の高い薄手の平織生地)を選ぶことで、見た目にも清潔感が保ちやすくなる傾向があります。

最近よく耳にするウォッシャブルスーツは、洗える手軽さと引き換えに、立体感が損なわれたり、テカリやヨレが出やすい傾向があります。社内での使用なら十分でも、お客様の前に立つ営業職として「どう見えるか」を意識してほしいとお伝えしました。

近藤が手のひらを大きく広げるジェスチャーで語りかける様子。受講者は後ろ姿が中心。
「皆さんは、会社の看板を背負って、お客様の前に立っている」——近藤が語りかける。

「皆さんは、会社の看板を背負って、お客様の前に立っています」

セミナーで最後にお伝えしたのは、こういうことです。

あるとき、きちんとした身だしなみの営業担当者が来てくれたとき、商品の説明を聞く前から「教育の行き届いた会社だな」という印象を持ったことがありました。逆に、別の担当者が崩れた状態で来たとき、担当者個人ではなく、その会社への信頼感まで一緒に下がってしまった——そういう経験があります。

若手の方々は、自分ひとりで営業しているのではありません。その日の身だしなみが、会社全体の印象として相手に残ります。

スーツは「なんとなく着るもの」ではなく、信頼を得るための「道具」です。道具は、正しく選んで、正しく使う。そういう意識が積み重なって、信頼になっていくと私たちは考えています。

この日の私自身の服装——ピークラペルの紺スーツ、赤系のレジメンタルタイ——も、意図して選んでいます。一流企業の前で失礼のないよう、かつ場に飲まれない存在感を持てるよう。それが、この日の「どう見られたいか」に対する私自身の答えでした。

法人向け研修・登壇のご相談

今回のような営業職・新入社員向けの「身だしなみ/第一印象/信頼形成」をテーマにした研修・講演について、企業・団体の研修ご担当者の方からのご相談をお受けしています。15分・30分・60分など、お時間や目的に合わせて構成します。内容・費用のご相談は、下記までお気軽にお問い合わせください。


ご来店・ご予約はこちら

株式会社D'フレイム(オーダースーツ専門店)

JR水道橋駅 東口 徒歩3分 / 東京メトロ神保町駅 徒歩7分
TEL:03-6272-4805
Instagram:@dframe2002
LINE:https://lin.ee/tEUvmMI

営業時間:平日 9:30〜18:00 / 土 10:00〜16:00 / 日祝 休(要連絡)
ご来店は電話またはLINEにてご予約ください(予約優先制)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です